ゆかりの和歌の花天井

  1. HOME
  2. ゆかりの和歌の花天井

テーマ

「思いやり(博愛)」と「知性」がこの世を照らす

主題

千二百年の年月を経て御祭神に祈りを捧ぐ

阿保神社創建の由縁に結び付く和務の天井絵を描く

美しくダイナミックに、そして荘厳によみがえる・・・

絵により感謝を、書により鎮魂を。

拝殿北側

御祭神の潔白の人生神への祈り

一つの風景に対比するものを描き、その中に隠された阿保親王様のご生涯における潔白の真実を物語として浮かび上がらせる

  • このたびは幣もとりあへず手向山 紅葉の錦神のまにまに

    菅原道真公 古今集羈旅歌四二〇 百人一首二十四番

  • 忘れて夢かとぞ思ふ思ひきや 雪踏みわけて君を見むとは

    在原業平公 古今集雑歌下九七〇 伊勢八三段

  • 大原や小塩の山も今日こそは 神代のことも思ひいづらめ

    在原業平公 古今集雑歌上八七一 伊勢七六段

  • 秋の野に笹分けし朝の袖よりも あはで寝る夜ぞひちまさりける

    在原業平公 古今集恋歌三 六二二 伊勢二五段

  • ちはやぶる神代も聞かず竜田河 からくれなゐに水くくるとは

    在原業平公 古今集秋歌下二九四 伊勢百六段 百人一首第十七番

拝殿南側

日本文化と四季折々の幽玄の美御祭神の善政の志

切り取られた美の一瞬、その中から幾千年を経ても変わらぬ四季折々の究極の美と日本文化の素晴らしさ人生の幽玄そして親王様の善政の志を今の世に伝え浮かび上がらせる

  • こちふかはにほひおこせよ梅の花 あるしなしとて春をわするな

    菅原道真公 拾遺集 雑春一〇〇六 大鏡

  • 今日来ずは明日は雪とぞ降りなまし 消えずはありとも花と見ましや

    在原業平公 古今集春歌上六三 伊勢十七段

  • からころも着つつなれにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ

    在原業平公 古今集羈旅歌四一〇 伊勢九段

  • 世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし

    在原業平公 古今集春歌上五三 伊勢八二段

  • 月やあらぬ春や昔の春ならぬ わが身一つはもとの身にして

    在原業平公 古今集恋歌五 七四七 伊勢四段

阿保神社に散りばめられた“由縁”が千二百年の時を経てこの今和の御代によみがえる歴史の謎の物語

和歌書・和歌解釈とイメージ:阿保神社 宮司 山野美江

ゆかりの和歌の花天井の制作に関わってくださった方々へ

ゆかりの和歌の花天井の構想は、ある日突然私の目の前に舞い降りてきました。

その前月に上西義隆様との会話の中ではたくさんのご助言などがあったのですが、実はそこからが私の長い長い旅の始まりだったのです。

そもそも、ゆかりの和歌の花天井とは、御祭神である菅原道真公、氏神様である阿保親王様ゆかりの歌人である在原業平公の和歌十首に、私自身が今新たに新解釈を加えてそれを絵と書にするという超難題でありました。

その後たくさんの紆余曲折を経て、まずは花にまつわる御祭神のゆかりの和歌を探すことになったのです。

即ち、この花天井プロジェクトそのものが御祭神の『由縁』(ゆかり)をテーマとしていましたので、机上では約五十冊を超える書物を読み漁ったり、約半年の間に約五十箇所程度の場所を訪れたりしました。その場所も近畿を中心として愛知県から福岡県に渡る西日本のたくさんの府県の神社仏閣、墓地、または山や野原、そして古民家、資料館を訪れたのです。

その中でも、特に私の新解釈の力になったのは、松原市文化財保護審議委員会の会長兼、松原市観光協会の理事でいらっしゃる西田孝司先生と、松原市在住にて平安文学など古典を専門として地域の歴史や文化などにも大変お詳しい大野菜穂美様のお二人でした。

3人で時間の過ぎるのも忘れるくらいに語り合ったこともありました。またその都度メールなどを通してのやり取りもたくさんのヒントになり、時には私の心の支えになったのです。

そして、京都佛画研究所の代表絵師の大里宗之様、絵師の大里道子様は、ゆかりの和歌の花天井絵の制作において私の制作の意図を微に入り細に渡わたり吸い上げて、見事なまでの絵を描き上げてくださいました。

一千年以上の時代を経て有名な和歌に新たに新解釈を加えるというかなりの大胆なモチーフに対しても、私のこだわりや思いなどを書き記した十枚に及ぶレポートを真っ直ぐに汲み取ってくださいました。

そして、時に繊細にまたダイナミックに、美しく荘厳に描いてくださり阿保神社の拝殿によみがえることになったのです。

また更に、その絵に私が書をもって和歌を記すことになりましたため、その書の先生との出会いも奇跡と言わざるを得ません。

それは、息子の担任の先生であり現代日本の書壇において著名な倉橋奇艸先生からのご紹介にて、群艸会の立山艸雪先生との出会いがあったのです。

ことに立山先生の書は、とても優雅で美しくなめらかでありつつも、一度見ただけでも心を惹きつけてしまう強さや深さを兼ね備えていらっしゃいます。ずっと眺めていても全く飽きることもなく、まるでその世界観にすいこまれるような書なのです。そして、立山先生のように書きたい、書けるようなりたいとお稽古して臨んだのが拝殿の天井絵の和歌の書となります。

つまり、これら多くの方々のご協力やご支援などの集大成としてこのゆかりの和歌の花天井絵があるのです。

改めまして、上西義隆様をはじめとして、京都佛画研究所の大里宗之様、大里道子様、上杉社寺匠芸の職人の皆様また、いつも支えてくださる西田孝司先生、大野菜穂美様、また書の立山艸雪先生、その他大勢の皆様のお支えをいただき、ここに完成に至ったことに対して心よりの感謝を申し上げます。

そして、個々の詳細な和歌の新解釈に関しては、後々にわかりやすくまとめて発表したいと考えています。もうしばらくお時間をください。

このゆかりの和歌の花天井絵の完成は、実は御祭神の『由縁』(ゆかり)を探す長い旅の途中です。ここに一区切りの完成を見ましたが、まだまだ先には長い旅が待ち受けています。

氏神様でいらっしゃる阿保親王様の御意志と御事跡が、千二百年の時を経てこの令和の御代によみがえり、『思いやり(博愛)』と『知性』が、この世の未来を照らすという御祭神様の目指された世界が訪れるよう、この旅をしっかりと進めていきたいと思います。

令和六年十二月

阿保神社

宮司 山野美江

花天井絵の修復保存と花天井絵の奉納

京都佛画研究所

代表絵師・修復士 大里宗之様

絵師 大里道子様

設計施工

有限会社 上杉社寺匠芸